札幌地方裁判所 昭和44年(ワ)1750号 判決
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〔判決理由〕一、逸失利益
<証拠>によれば、亡慎一は原告成見と原告千恵子の長男として出生し、本件事故当時満二〇才の健康な男子であつたこと、中学校を卒業後士幌高等学校定時制課程に入学し、昭和四三年三月、同校を卒業して同年四月、原告公社に就職し、札幌北電報電話局において、主として電報配達の業務に従事していたことを認めることができる。
しかして、本件事故により同人が被つた労働能力喪失による損害は次のとおり算定される。
(年収額) 八一六、四〇〇円(労働省労働統計調査部、昭和四四年「賃金センサス」による新制高校卒業の男子労働者の産業計、企業規模計、年令階級計の平均月間きまつて支給する現金給与額および平均年間賞与その他の特別給与額を基礎に算出)
(生活費控除) 右収入額の五〇パーセント
(就労可能年数) 四〇年(二〇才〜六〇才)
(中間利息控除) ライプニッツ式複利年金現価計算による(係数は17.1590)
(損害額) 七、〇〇四、三〇三円(円未満切捨) 算式
816,400×0.5×17.1590=7,004,303.8
ところで、原告らは、原告公社の給与体系等に基づいて亡慎一の逸失利益を算定して、これを請求している。しかしながら、すでに認定したとおり、亡慎一は本件事故当時、満二〇才であり、原告会社に勤務してから未だ一年しか経過しておらず、また、同人の学歴や同人が従事していた職務内容をも考えあわせると、この時点で将来数十年間にわたる同人の職業生活を一義的に予測確定することはおよそ不可能事に属し、転職等の可能性も当然考えられるところである。このように就職しているとはいえ、未だ当該職業に対する定着性が不安定な若年労働者が生命侵害によつて失つた逸失利益を算出するにあたつて、原告らが主張するように現在勤務している特定の企業に勤務し続けることを前提とし、そこにおける給与体系をその算定資料として、昇給、退職手当等までも考慮することとすると、擬制的要素を強めるばかりか、偶然の事情によつて被害者間に著しい損害額の高低を生ぜしめ、(たとえば、被害者の就職の前と後において生じる賠償額の極端な差を是認する合理的根拠は乏しい。)その間の不衡平を招来することはなはだしい。かかる場合には、同人の喪失した収益の具体的算定に代えて、同人が生命侵害により喪失した労働能力それ自体を評価算定してその賠償を認めるのが相当であり、その評定算定の方法としては、被害者が全体の期間を通じてどれだけの収入を挙げうる能力を持つていたか、また、それだけの収入を挙げるためには一般にどの程度の必要経費としての生活費を要するかを合理的に算定すれば足り、各期毎の収入あるいは支出を算出、認定することは必ずしも必要ではないのであつて、右認定の諸事情に鑑みるとき、前記のような方法によるのが相当である。
二、原告公社の代位等
<証拠>によれば、本件事故は亡慎一が札幌北電報電話局職員としてその業務に従事中に発生したところから、原告公社は、これを日本電信電話公社職員業務災害補償規則所定の業務災害と認定し、遅くも昭和四四年五月二四日に、同規則二四条に基づき治療費二九、三七二円、三五条、三六条に基づき遺族補償費二、五〇〇〇、〇〇〇円および四三条に基づき葬儀費用三三四、〇九七円(うち一五〇、〇〇〇円を超える分については後述のとおり)、以上合計二、八六三、四六九円を亡慎一の父母である原告成見、同千恵子に支払つたことが認められる。
ところで、右規則四三条二項によれば、原告公社が災害補償として支払うべき葬儀費用の額は、これを一五〇、〇〇〇円とする旨定められているので、原告公社が葬儀費用として支払つた右金員中一五〇、〇〇〇円を超える分については、義務なくして出捐をなしたこととなるが、弁論の全趣旨によれば、原告公社としては、これを被告らのために立替えて支払つたものと推認される。
しかして、原告公社は右出捐中、右規則により災害補償として支払うべき分については民法四二二条の類推により、また、その余の部分については民法七〇二条により被告らに請求しうることになる。
(惣脇春雄 村上敬一 佐藤久夫)